
【ブックレビュー】どん底サラリーマンが株式投資で2億円 いま息子に教えたいお金と投資の話
著者/DokGen
発行/ダイヤモンド社
数多ある投資本の中でも本書はとても特徴的でとても面白かった。
なぜなら本書はサラリーマンであるDokGenが株式投資を始め、その後離婚を経験、父子家庭となりさらには株で失敗し90万円まで資産が減少、そこから資産2億円までを積み上げてきた人生が赤裸々に語られているからだ。
本書ではただその投資術を紹介するだけではなく、その合間合間にDokGenと息子とのやり取りが小説風に挟み込まれている。
これがかなり心に染みてくる、著者の人間性というものがにじみ出てくるようだ。
息子との会話があまり得意ではなく、特に思春期で荒れた頃など父親と息子両方の気持ちが分かってしまい、胸に来るものがある。
資産運用はその人間の人生の一部であることを改めて痛感させられる。
サラリーマンが安定した給料でいい生活を送れる時代は終わった

著者がサラリーマンになったころはギリギリ「終身雇用」や「年功序列」が残っている時代だった。
しかし現在では完全に崩壊していると著者は息子に伝えている。
サラリーマンで就職しても定年まで働ける保証はどこにもないし、定年過ぎてからも生活を安定させるには再就職や、半分の給料での再雇用など夢の年金生活は本当の夢になってしまっている。
本書でも投資を始めた著者とその上司の話を引き合いに出している。
著者は会社とは別に投資で資産を持つことが出来たが、投資をしてこなかった上司は定年後その会社で再雇用をされ今の給料の半分で働くことになるという。
著者はその上司を否定しているわけではないが、「労働者であるなら資本家を目指すべきだ」と述べている。
独立した資産を持つことが仕事に働かされない自分を保つことができる、その為にも株式を買い投資家になればいい。
DokGen流 軍資金の作り方

離婚後、9.11の煽りを受け投資に失敗して残金90万円のどん底になった著者は投資の種銭を作るにはまず徹底した節約と自らを見つめ直すことから始めた。
それが「S.W.O.T」だ
- S=Strength(強み)
- W=Weekness(弱み)
- O=Opportunity(機会)
- T=Threat(脅威)
そのなかで著者は強みは「サラリーマンである事」を強く意識している。
前述した事とは一転するのだが、確かに終身雇用が終わりを告げたとはいえサラリーマンである事の最大の武器は「安定してお金がもらえ最低限の暮らしが保証されている」という事だ。
著者はそのことを強く思っていて、それならばそれを最大限に生かし年収400万円の半分を貯金する超節約生活を敢行し「目標1000万円」を目指した。
それも父子家庭なので保育園のお迎えや家事をこなしながらなので、残業はゼロ。
まさに孤軍奮闘である。
特にこの頃のエピソードで「みんなママがお迎えに来るのに自分はパパがお迎えに来るのが嫌だ」と泣く息子のエピソードは子供ながらに離婚で寂しい思いをさせている心情が分かり胸を打つものがある。
それでも固定費である住居費を通常収入の20~30%のところを15%に抑えたり、食費は月に3万円。
衣服は全身ユニクロという超節約生活を続けて軍資金を貯め続けた。
なぜ1000万円まで投資を始めなかったのか。
その理由は「投資はお金持ちがお金をさらに増やす構造である」からで、いかに良い投資先でも種銭が少なければ複利の効果は薄いと考えていたからだ。
そんな節約生活を経て4年間で90万円から1000万円に貯金を増やした著者がようやく投資を開始する。
DokGen流 投資術「ほっとけ投資」

本書で伝えている投資術は基本的に日本株の個別株投資である。
そのため投資初心者やインデックス投資だけをしている人が手を出すべき投資法ではない。
それに著者は一般的に言われている事とは真逆の事も言っている。
それが「卵は一つのカゴに盛れ」だ。
これは個別株集中投資の事であり、かなりハイリスクな投資方法だと言える。そのためハイリターンもあるのは事実。
著者は資産形成の段階であれば分散よりもむしろ集中した方が資産を早く増やすことが出来ると言っている。
確かに、暴落する危険があるし実際に著者も暴落を経験している。
当時、一時期2億円まで行った資産が暴落で8千万円まで下がってしまってかなりショックを受けたことがあったが、元手1000万円から考えれば大きく増やせたこともまた事実である。
そして著者が考えた投資方法「ほっとけ投資」とは下記の様な銘柄選定方法である
- 知っている会社
- たぶん倒産しない会社
- 割安な会社
- 小さい会社
サラリーマンという自分の持ち味を最大限に発揮して、自分の知っているセクター、業種に絞って投資する。
自己資本比率や利益余剰金、現金などを見て財務優良企業から、成長率の高い小型株で割安に置かれている会社を探し出す。
とくに著者が念頭に置いているのは「自分がこの会社のオーナーになれるか?」という基準だ。
株式投資の基本に立ち返り自分が会社のオーナーになるという意識で、自分の知っているセクターの企業から財務状況をしっかり見てホールドする。
そのスタイルがDokGen流だという。
本書では更に詳しくその方法を説いているので、興味がある方はぜひ手に取ってみて欲しい。
サラリーマンが株式投資に勝つ手法

そんな投資を続け資産2億円まで積み上げた著者がサラリーマンになった息子に証券口座を作ってあげた、軍資金は80万円。
この80万円とは著者自身が投資を始めた頃、母親からもらった金額である。
母親は投資の事が分からないがこれでやってみなさい著者にくれたのだという。その80万円を今度は自分の息子に就職祝いとして証券口座に入金した。
この頃になるとだいぶ息子との距離感も縮まってきており二人で居酒屋で離す程になっているのが涙ぐましい。
そんな息子に著者が次の言葉を伝えている、それは「3S+1」だ。
- 借金をしない
- スタディ(勉強)をする
- 仕事を頑張る
- +働く伴侶を娶る
これはかなり著者の人生が詰まっている言葉であり、著者自身と言ってもいい。
資産形成をする際に借金は大きな重荷になる、特に住宅ローンなど若いうちから背負ってしまうとその返済に35年という長い時間を取られるからだ、残った家がまだ資産価値がある確率も低いし、節約をしようと固定費の調整をしようとしても難しい。
また勉強は投資に直結する。
常に勉強し投資先の状況を確認しなければ経済の流れについていけない。スマホゲームなどで時間を潰しているなら経済ニュースの一つでも見る事が大事だし、投資に触れていればまた気になるはずである。
仕事を頑張る事は投資にもつながる、仕事を頑張るうえで新たな投資のヒントを得る事が出来るからだ。
そうした3つの助言は今まで何となく投資をして失敗してきた著者の生きた言葉である。
そして最後の+のところは仕事ではなくプライベートな生きた言葉であった。
それが「働く伴侶を娶る」
これは言わば「価値観の合う相手を見つけよ」という事と言い換えてもいい。
いくら資産形成に励んでもそれを支持してくれない相手や、浪費に走る相手であるとたちまち資産形成は破綻してしまう。
それを身をもって経験している著者だからこそいえる言葉であろう。
まとめ
本書は何よりも息子に向かって書かれている温かみがある。
それはどん底に落ちたサラリーマンが男手一つで息子を育てながら仕事に励みその中で投資をしてきたという生きた経験が描かれているからだ。
本書を読んでいて何が一番良かったか。
それは著者がお金を増やせたことではない、息子と二人で居酒屋で晩酌できるまでの仲になっていてくれたことだ。
よく投資本を書かれている人はお金第一主義だという目で見られてることが多い。デイトレードやFXなども流行っていて、億り人という言葉も流行っている。そこには人間味の無い技術論ばかりであった。
そんな中で2億円を築き上げた著者の中には常に息子への愛情があるように感じ取れた。
確かにこの本の中で書かれている投資術はかなりストイックでハイリスク・ハイリターンなものがあり、真似してしまうと痛手を負いかねない手法もある。
しかし、本書は投資本であって投資本だけではない温かみがある作品である。
読み物として、ぜひ多くの人に手に取って読んでもらいたい。
Written by NAOMARU
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